熊本で「水」って、そんなに大事?
どうも!
水も滴るいい男…
になりたいと夢みる男、平川です

熊本を訪れたことがある人は、一度はこう聞いたことがあるはずだ。
「熊本の水はうまかろう?」
え、水なんて全国どこでも同じじゃないの?
――と思うかもしれない。けれど、熊本県民にとって「水」はただの飲料水ではない。
それは、誇りであり、日常であり、地域アイデンティティのようなものなのだ。
実際に熊本市は、政令指定都市で唯一、全ての水道水を「地下水」でまかなっている
“地下水都市”
しかも、そのまま飲めるほどきれいでおいしい。
今回は、そんな熊本県民がなぜ水にうるさいのか、その背景をひもといていこう。
地下水100%の都市、それが熊本

熊本市を中心に、県内の多くの地域では「地下水」が生活の水源となっている。しかも、これは単なる地下水ではない。阿蘇の山々や広大な草原、火山灰でできた地層によって、何十年もかけてじっくりとろ過された天然のミネラルウォーターそのものだ。
例えば、熊本市の水道水の硬度(カルシウムやマグネシウムの含有量を示す数値)は約60〜90mg/L程度の「中程度の軟水」。クセがなく、料理にも最適とされ、特にお米を炊いたときの味の違いに驚く人も多い。
熊本市のホームページや水道局でも「蛇口をひねればミネラルウォーター」と表現されるほど、質の高さには自信があるのだ。
ペットボトル、買わないって本当?

「熊本の人は水を買わない」とよく言われる。これ、あながち間違いではない。
たしかにコンビニやスーパーにはペットボトルの水も売られているし、買う人もいる。けれど、日常的に「水を買う必要がない」という意識が根強く残っているのだ。
家庭では蛇口の水をそのまま飲む人も多く、浄水器すら設置していない家も珍しくない。オフィスや公共施設ではウォーターサーバーよりも、給湯室の水道水が愛されている。
また、熊本市では「マイボトル推奨」が進んでおり、
市内各所に給水スポット(給水できるカフェや公共施設など)を設置。
観光客にも「熊本の水を飲んでみてください」とアピールしている。
「硬度トーク」で水の違いを語る県民

熊本県民にとって、水はただの飲み物ではなく“語れるテーマ”だ。
たとえば旅行先で飲んだ水が「硬い」「苦い」と感じたら、それは「硬度が高い水」=「硬水」だったかもしれない。ヨーロッパの水や関東の水に比べ、熊本の水は圧倒的に「軟水」である。口当たりがやわらかく、のど越しもスッと入る。
熊本の人は、この微妙な違いをしっかり感じ取る。東京での生活経験がある人が「水が合わんかった」と話すのは、味覚だけでなく肌や髪の質感の変化を感じたからだったりする。
しかも、県内でも地域によって硬度が違うのをご存知だろうか?
たとえば、阿蘇地域はやや硬め、菊池・大津あたりは超軟水。
一口に水と言っても奥深い世界である。
「水」は熊本の観光資源でもある

熊本の水の魅力は、生活用水だけにとどまらない。
たとえば南阿蘇村の「白川水源」や、菊池市の「菊池渓谷」、球磨地方の清流など、
“湧き水スポット”や“名水百選”に選ばれた場所が多数存在している。これらの水源は、訪れるだけで涼やかな気分になれるうえ、飲用可能な場所も多い。
また、球磨焼酎や地ビール、豆腐、味噌、和菓子といった特産品にもこの地下水がふんだんに使われている。水がうまけりゃ、なんでもうまい。これが熊本グルメの底力だ。
水を守る活動も、県民の誇り
熊本では、水を守るための活動も盛んだ。
農家や林業者、企業、市民団体が一体となって、森林保全や農地の適正管理を進めている。なかでも「くまもと水循環・地域連携協議会」の取り組みは全国的にも注目され、スターバックスやイオンといった大手企業も水保全に参加している。
これは「おいしい水はタダではない」という考え方の表れ。自然の恵みに感謝しつつ、その循環を維持するために、地域ぐるみで努力する。それが、熊本の“水文化”なのだ。
「水」への意識が高いからこそ、生まれる誇り

いまや熊本の水は、単なるライフラインではなく、観光・グルメ・文化の土台となっている。水道水を飲めるという事実に誇りを持ち、地元の水の硬度まで語り、水を守るための活動にも積極的な県民たち。
こうした背景があるからこそ、「熊本の人は水にうるさい」と言われるのかもしれない。いや、むしろそれは「水に対して愛が深い」と言い換えるべきだろう。
次に熊本を訪れたときは、ぜひホテルやカフェの水をそのまま飲んでみてほしい。
きっと、そこには“水の都・熊本”の物語が詰まっているはずだ。










