
日本には、海外では考えつかないような独自の食事マナーが数多く存在します。旅行や日本での生活を考えている方にとっては、日本特有の食事のマナーは興味深いテーマでしょう。
日本人が大切にする基本的な食事のマナーを押さえておけば、トラブルを回避できます。また、会社の同僚や上司・クライアントとの会食で一目置かれる存在になれるでしょう。
本記事では、海外とはまったく事情が異なる日本特有の食事マナー11選と食事別(寿司・天ぷら・会席料理)に気を付けるべき食事マナー3選をご紹介します。
海外とは異なる日本独自の食事マナーを知りたい方は参考にしてください。
ここが海外とは異なる!日本の食事マナー11選

食事マナーは日々の生活に直結するため、あらかじめ基本的なマナーについて学んでおくことがおすすめです。日本特有の基本的な食事マナーを覚えて実践することで、日本人はあなたのことを温かく受け入れてくれるでしょう。
ここでは、以下の食事マナーを紹介します。
- 食前・食後に手を合わせて感謝する
- お椀を持ち上げながら食べる
- お椀を持ち上げながら食べる
- 正しい箸の使い方を心がける
- おしぼりは手を拭く以外に使用しない
- 汁物や麺類は音を立てて食べる
- 食事は基本的に残さない
- 和食は味が薄いものから食べる
- 食べ終わった食器は重ねない
- いったん食べたものは皿に戻さない
- 日本独自のお酌のルールに注意する
- テーブルに肘をついて食べない
それぞれの日本ならではの食事マナーと背景をチェックしましょう。
1.食前・食後に手を合わせて感謝する

日本では、食前・食後に両手を胸の前で合わせて食事に感謝するのがマナーです。食事の前には「いただきます」、食後には「ごちそうさまでした」と言います。
食べ物を摂取することは、肉や魚、野菜、果物など、自然にある動植物のいのちを自分たちが生きていくためにいただく行為です。日本では動物以外の食材にもいのちがあると考え、それらを自分のいのちを生かすために摂取するものと捉えて感謝の意を表します。
これには、食材の生育・収穫・運搬・調理など、テーブルに料理が運ばれてくるまでに関わっている、すべての生産者・物流関係者・販売者・調理人への感謝も含まれています。
このように、食事そのものや食事が出来上がるまでの過程に関わっている人たちへの感謝の気持ちを忘れずに、食べ物を摂取するたびに感謝するのが日本らしい文化です。
2.お椀を持ち上げながら食べる

日本では味噌汁やご飯などは茶碗で提供されることが多いです。欧米圏の人には信じられないかもしれませんが、茶碗は片手で持ち上げながら食べるのがマナーとされています。テーブルに置いたまま食べるのは、マナー違反とされるので注意しましょう。
こうした「片手で持ち上げながら食べるとよいもの」には、簡単に持ち上げられるものが該当し、小ぶりのどんぶりや小鉢、小皿なども片手で持ち上げながら食べるのがマナーです。
ただし、焼き魚の平皿やラーメン・うどん用の大きなどんぶり、大人数向けの料理が乗った大皿・中皿などは、片手で持ち上げるには不適格なので持ち上げる必要はありません。
片手で持ち上げられる重さ・サイズ感の器は、持ち上げながら食べるようにしましょう。
3.正しい箸の使い方を心がける

日本では洋食を除いて、ほぼすべての食事と一緒に箸が提供されます。外国人が箸の正しい・美しい使い方を知っていると、日本人から一目置かれる存在になれるでしょう。
近年では、日本食ブームによって、アジア圏以外の海外でも箸を使う機会は増えつつあります。しかし、箸を正しく使える外国人はまだまだ多くないというのが現状です。
正しい箸の基本的な持ち方は以下のとおりとなっています。
- 右手でペンの持ち方をイメージして、親指と人差し指で箸の真ん中をつまむ
- つまんだ親指と人差し指の間にもう一本の箸を通す
- 上の箸は親指・人差し指・中指で持ち、薬指と親指の付け根で支える
- 下の箸は固定しながら、上の箸のみを動かして食べ物をつかむ
そして、覚えておきたいNGマナーの箸の使い方は以下のとおりです。
- にぎり箸・・・箸をグーの形で握りしめて使うこと
- クロス箸・・・箸をクロスして食べ物を食べること
- 刺し箸・・・料理に箸を突き刺して食べること
- 寄せ箸・・・箸を使って器を引き寄せること
- 渡し箸・・・器の縁に橋を渡すように置くこと。食事終了の合図
- 逆さ箸・・・箸の持ち手を使って料理をシェアすること
- ねぶり箸・・・何も付いていない、もしくは付いている箸をなめること
- 立て箸・・・ご飯などに箸を突き立てること
- 移し箸・・・二膳の箸で一つの食べ物を運ぶこと
- 涙箸・・・食べ物の汁を垂らしながら運ぶこと
- 探り箸・・・食べたいものを探して混ぜること
- 迷い箸・・・食べ物に迷って食べ物の上で箸をふらふらと動かすこと
正しい箸の持ち方とNGマナーに注意して、美しい箸の使い方を意識してみましょう。
4.おしぼりは手を拭く以外に使用しない

日本のレストランに入店すると、ぬれたおしぼりが出されることが珍しくありません。個包装された使い捨ての紙おしぼりや、季節に応じて温かいまたは冷たい状態で出される布おしぼりなど、飲食店によって種類は異なりますが、基本的な用途は手を拭くことです。
日本人でも、手を拭く以外に口や顔を拭いたり、テーブルの汚れを拭いたり、メガネを拭いたりと、手を拭く以外の用途で使用している人もいますが、どれもマナー違反です。
インターネットでは「おしぼりで顔を拭くのはおじさんだ」という批判があることからも、その行為をすることで、周囲の人間からの評価が悪化してしまうリスクがうかがえます。
暑い時期に冷たいおしぼりを、寒い時期に温かいおしぼりを出されると、顔に当てて体温調節したいと考える方もいるかもしれませんが、お店ではやらないようにしましょう。
5.汁物や麺類は音を立てて食べる

日本料理の中には、音を立てて食べるのが一般的とされる食べ物があります。その代表格が味噌汁や中華スープなどの汁物や日本茶、ラーメン・うどん・そばなどの麺類です。
温かい汁物は音を立てながら食べることが多く、麺類は思いっきり音を立ててすすります。これは外国人からすると、あまりなじみのない食事のマナーかもしれません。
ただし、すべての汁物・麺類を音を立てて食べたほうがよいとは限りません。食べ方がよく分からない場合は、周囲の日本人に質問するなどして、正しい食事マナーを確認しましょう。
食べ物をくちゃくちゃと咀嚼するのは、海外と共通するNGマナーです。
6.食事は基本的には残さない

日本の食事マナーの基本は、出された食べ物を残さないことです。すべてを食べきることによって、食材や料理を作ってくれた人に対しての感謝を表せると考えられています。
どうしても食べられない食材やアレルギーがある場合は、事前に伝えておきましょう。
とはいえ、料理の量が予想以上に多かったり、体調不良で食べきれなかったりした場合は残しても問題ありません。代わりに「おいしかったです」と伝えてその場を後にしましょう。
7.和食は味が薄いものから食べる

日本料理は味が薄いものから順番に食べるのが基本的なマナーです。特に味がデリケートな和食では、味が濃いものから食べると味が薄い料理を楽しめなくなってしまいます。
まずは汁物からスタートして、その次にお米や漬物、最後にメインのおかずを食べます。この汁物・お米・おかずの順番に食べ進めることを「三角食べ」と言うのが特徴です。
日本料理を汁物から食べ始める理由は、汁物で箸をぬらすことで、その次に食べる粘り気のあるお米を食べやすくするためです。非常に実用的な食事マナーとなっています。
和食を食べる順番について知って実践すれば、ビジネスの場でも大いに役立つでしょう。
8.食べ終わった食器は重ねない

日本の飲食店で、いくつかの小料理がセットになっている定食や懐石料理などを食べる際に、よかれと思って食べ終わったお皿を重ねる方もいるのではないでしょうか?
実は、食べ終わった皿をむやみに重ねるのはNGです。お皿の底やテーブルに汚れが付いたり、お皿を重ねることで皿自体に傷が付いてしまったりするリスクが考えられます。
9.いったん食べたものは皿に戻さない

いったんは口に入れたものを、かみきれなかったり、一口が大きすぎたりしたために、皿に戻してしまうのは食事のマナーとしてはNGです。いったん口に入れた食べ物を見せると、食事している相手や周りの人を不快な気持ちにさせてしまう可能性があります。
かみきれない料理を無理に飲み込む必要はありませんが、可能な限り小さく切り分けてから食べると、口に入れた食べ物を戻してしまうリスクを減らせるはずです。
口に入れた食べ物を皿に戻すのは、基本的にNGだと考えて食事をとるようにしましょう。
10.日本独自のお酌のルールに注意する

日本にはお酒の席における独自のルールがあります。例えば、日本の宴会の席では、部下が上司に対して、後輩が先輩に対してお酒を注ぐ「お酌文化」が根強いです。他人にお酒を注ぐ文化は、お神酒や神道などに起源を持つ「相手の幸せを願う心」が込められています。
まずはお酌する相手にお伺いを立てて、どのお酒がいいのか質問してお酒を注文します。
相手の盃やおちょこ、グラスが空になったタイミングで「次も〇〇でいいでしょうか?」と聞くと、よく気が遣える人だという評価を得られるでしょう。
アルコールの種類別の食事マナーは以下のとおりです。
【日本酒をお酌する・お酌される際のマナー】
- 左手を添えて、右手で徳利の腹を持ってお酒を注ぐ
- おちょこに両手を添えてお酒を待つ
- 注がれたら少量のお酒をすぐに飲む
【ビールをお酌する・お酌される際のマナー】
- ビール瓶のラベルを上にして注ぐ
- 左手を添えて、右手でグラスの腹を抱えてビールを待つ
- 乾杯は年配者よりもグラスを低くする
【ワインをお酌する・お酌される際のマナー】
- ラベルを上にしながらワイングラスの1/3を目安に注ぐ
- ワイングラスをテーブルに置いた状態でワインを待つ
ただし、相手から「手酌でいい」といわれたら、無理にお酌する必要はありません。アルコールの種類によってもお酌のマナーがあるため、一つひとつ覚えていきましょう。
日本特有のお酌のルールを確認して、日本の飲み会で実践してみては?
11.テーブルにひじをついて食べない

日本ではテーブルにひじをついて食事をとるのはNGです。ひじをついて食べると見た目がよくないだけでなく、自然と姿勢も前のめりになってしまって印象が悪いです。箸を持っていないほうの手はテーブルの上に置くようにするか、食器に添えるようにしましょう。
【食事別】日本で気を付けるべき食事マナー3選

日本の食事マナーは、食事によって規定されるものもあります。特に日本料理の寿司や天ぷら、会席料理などは、模範的な食事のルールやマナーがあるのが特徴です。
ここでは、会食に備えて覚えておきたい食事別のマナーについてチェックしましょう。
1.寿司を食べる際のマナー

寿司を食べる際の基本的なマナーは、以下のポイントにまとめられます。
- 手で食べるのがベターだが、箸で食べてもOK
- シャリではなくネタに醤油を付ける
- 軍艦巻きはガリに醤油を付けてネタの上に垂らす
- 繊細な風味を邪魔しないために香水やたばこは控える
手で食べるのか箸で食べるのか悩みがちなポイントですが、どちらでもOKです。シャリが崩れてしまうのを防ぐために、寿司を真横にしてネタに醤油を付けるようにしましょう。
いくらやネギトロなどの軍艦巻きは、ガリに醤油を付けて塗るか、垂らすようにして醤油味を付けるのがマナーです。こうすることで、シャリを崩さずに寿司を楽しめます。
また、寿司に限らずですが、繊細な風味を味わう寿司を食べる際は強い香水やたばこは避けるようにしましょう。せっかくのおいしい寿司が、香りによって邪魔されてしまいます。
2.天ぷらを食べる際のマナー

天ぷらを食べる際の基本的なマナーは、以下のポイントにまとめられます。
- 揚げたての天ぷらを冷める前に食べる
- 盛り合わせの場合は手前から食べる
- 天つゆはタネをささっとくぐらせる程度にする
- 塩は親指と人差し指でササっとつまむ程度にする
- エビの尾やししとうの軸などは1カ所にまとめて隠す
天ぷらは提供するタイミングが、一番おいしくなるように計算されています。そのため、揚げたての状態でいただくのがマナーです。また、盛り合わせを注文する際は、手前側のタネから食べましょう。手前側のタネから味が徐々に濃くなっていくように考えられています。
天つゆで食べる場合は、ササっとくぐらせる程度にしましょう。天つゆに浸してしまうと、天ぷらを食べる際につゆが垂れて涙箸になってしまうリスクがあります。
塩で食べる場合は、人差し指と親指で軽くつまんだ塩を天ぷらに直接掛けましょう。
エビの尾やししとうの軸など、可食部以外は1カ所にまとめて隠すのがマナーです。
4.会席料理を食べる際のマナー

会席料理は日本料理のコース料理です。お酒に合うような料理が一品ずつ提供されます。一般的には前菜・煮物・刺身・焼き物・ご飯と味噌汁の流れで出されます。種類が多い刺身の盛り合わせは左側から、焼き物も左側からいただくのがマナーです。
一個一個の食材が大きすぎる料理は、箸で小さく切ってから口に運ぶようにしましょう。
まとめ:日本特有の食事マナーをマスターして生活を充実させよう!

この記事では、海外にはない日本特有の食事マナー11選や食事別のマナー3選をご紹介しました。日本食や日本ならではの食事マナーの中には、理解するのが難しいものもあります。
正しい箸の使い方や食べる順番、お酌の仕方など、覚えるべきことはたくさんあります。
基本の食事マナーを一つずつマスターして実践していくことで、日本ならではのマナーや考え方が理解できるはずです。食事マナーを知って日本生活を充実させましょう。
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